あ。
見慣れた後ろ姿を発見し、私はすぐに走り出した。



「ぎ〜んときッ!」

「のわッ・・・・・・!」



そして、その勢いで飛び付くと、銀時が少し後ろに仰け反った。・・・・・・当然だ。銀時より背の低い私が、銀時の肩の上に腕を伸ばし、突然飛び付いたのだから。
でも。決して、倒れることはない。日頃、ぐうたらと過ごしているように見えて、実はしっかり体を鍛えているのよね。さすが、侍。
私は、そんな銀時の背中が大好きで、もっとギューッと抱き着いた。



・・・・・・!首!絞まるから・・・・・・!!」

「だいじょ〜ぶッ!」

「大丈夫じゃねェって・・・・・・!!」



本当はまだくっついていたいけど、いつまでもそうしているわけにはいかない。仕方なく離れ、私は銀時の横に並び、一緒に歩き出した。



「ったく・・・・・・。」

「ビックリした??」

「当たり前だ。」

「やったね!」

「あのなァ〜・・・・・・。急にあんなことされたら、危ないだろ?それに・・・・・・その・・・・・・胸も当たるし・・・・・・。」

「うわー。銀時、やらしィ〜。」

「な・・・・・・!そ、そもそも!!があんなことするから、だろッ?!」

「ハハハ!」

「・・・・・・反省してねェな?」

「当然!」

「わかった。・・・・・・覚えてろよ?」



まるで、主人公にリベンジを決意する敵キャラ、しかも結構な雑魚キャラ。でも、そういうキャラって何度も登場して、なかなか倒されなかったりする。意外と強いのかもね。・・・・・・って、そんな話がしたいんじゃなくって。でも、銀時も似たところがあるかもしれない。
とにかく、銀時はそんな言葉を呟いた。

・・・・・・なんてやり取りをしたのは、いつだったかな。
正直、もう忘れかけていた。・・・・・・銀時にやり返されるまでは。



。」

「!!」



しかも、元気良く銀時の名を呼んだ私に対し、銀時は、耳元で囁くように私の名を呼んだ。
後ろを振り返って確認しようにも、銀時が私の頭の上に顔を乗せているらしく、うまく動けない。ただ、この声や、自分の肩から見える着物の袖は、銀時のものに間違いない。だから、問題ないんだけど。
・・・・・・って、ないわけが無い!!



「銀時?!」

「驚いた、だろ?」

「当たり前でしょ・・・・・・?!」

「これで俺の気持ちもわかっただろ?」

「・・・・・・わかった。わかったから、離して。」

「いや。そんなことを言うってことは、わかってねェな。」

「なんで?!!」



自分もやっておきながら何だけど。道の真ん中で、こんなことをしていたら、すごく邪魔だと思う。でも!そうだと思って、私はすぐに離れたじゃない!!それなのに、銀時はなかなか離そうとしなかった。



「わかるまで離さねェからな?・・・いや、わかっても離さねェけど。」

「それ、結局ダメじゃない!!」

「何だよ、嫌なのか?」

「そうじゃないけど・・・・・・周りに迷惑でしょ?」

「・・・・・・じゃ、とりあえず、がわかったら離す。」



幼い子供のように、少し拗ねた様子で呟くのが聞こえた。
いい大人が、なんでそんなに可愛いかな・・・・・・?!!
思わずキュンとして、目の前にある銀時の腕に、自分の手を添えそうになる。・・・・・・って、これじゃ、離さないでと言っているようなものだ。
でも、本当にここが道の真ん中でなければ、私だってずっとこうしていたい。
・・・・・・もしかして、そういうこと??



「わかった、銀時。」

「何?」

「今後、また隙があれば、私は前みたいに銀時に飛び付く。そして、ギューッて銀時に抱きつく。だから、今は離して?」

「・・・・・・ま、半分正解か。」



そう言いながら、銀時は私から離れた。そして、私の横に並ぶ。
正直、少し恥ずかしくて、あまり目を合わせられないんだけど。まるで何も無かったかのように、私は冷静に返してみせた。



「半分??どういうこと?」

「だって、さっきのじゃ、“今後”の対応はわかったけど、“今”の気持ちは聞けてないだろ?だから、半分。」

「・・・・・・要は“今”どう思ったか、言えばいいわけね?」

「そういうことだな。それ次第で、完璧な正解か、そうでないかがわかるわけだ。」



恥ずかしさを堪え、頑張って見ていた銀時の顔が、ニヤリとしたものに変わる。それにも思わずドキッとしてしまったけど、私は平静を装った。
だけど。正直に今の気持ちを言おうとすると、このまま冷静でいるのは難しい。でも、不正解になれば、またさっきの状況に戻ってしまうかもしれないし、不正解だと言われてしまうのは何だかちょっと悔しいし。
それに、さっきの答えで半分正解なのだから、やっぱり私が思ったことをそのまま言えば、ほぼ間違いなく大正解なんだと思う。



「・・・・・・。」

「ん?どした??」



私が返答に困っていると、銀時が嬉しそうに問い返してきやがった。・・・・・・このドSめ。



「そうね・・・・・・。今は、周りにも迷惑だし、恥ずかしいし、って気持ちもあったけど。正直・・・・・・、嬉しかった。これでどう?」

「ん〜・・・・・・、もうひと超え!」

「・・・・・・。じゃあ・・・・・・。銀時も、また抱きついてきてね?・・・・・・これでいい?」

「おう、任せとけッ!」

「もう・・・・・・。」



結局、私は言わされてしまい、銀時は嬉しそうに笑っている。・・・・・・本当、なんで私もこんな男が好きなのかな?なんてわかりきったことを考えていたら、銀時が何かを思い出したような表情になった。



「あ。」

「どうしたの?」

「いや、俺からするのもイイんだけど。やっぱ、銀さんとしては、からしてほしいなァーと・・・・・・。」

「なんで?」

「そりゃ、まァ・・・・・・その方が・・・・・・感触的に。」

「かんしょく??」



一体、どの“カンショク”なのか。間食なのか、官職なのか、・・・・・・。ただ、文脈的に1番“感触”が当てはまりそうだとは思った。だからと言って、どういう意味か・・・・・・。
と考えている内に、私もついさっきの銀時のような顔になる。



「あ。もしかして、この間、私が抱きついたときの・・・・・・。」

「そうそう!やっぱり、背中に当たる感じが結構・・・・・。」

「バカッ!」



銀時の言葉を遮って、私はそうツッコミを入れた。
・・・・・・こんな所で何を言おうとしてるんだ、この男は。
動揺する私を余所に、銀時は相変わらずニヤリとした笑みで私に問いかけた。



「で?またしてくれるんだよな??」

「・・・・・・銀時もしてくれたらね。」

「りょーかいッ!」



所謂、これが世間で言う、“バカップル”だ。それを学んだだけでも、今日は良しとしておこう。
などと言い聞かせながら、私は照れている顔を見られないよう、前を向いた。その隣を、銀時はまだ歩いている。



「・・・・・・で。銀時はどこまでついて来るつもりなの?」

「え?そりゃ、の家だけど?」

「ああ、送ってくれるのね。ありがとう。」

「それもあるけど・・・・・・。その後、家に上がってもいいよな??」

「??お茶ぐらいは出すけど・・・・・・?」

「と言うか・・・・・・“続き”しない??」



ニヤニヤとしている、この男の言う“続き”とはどういう意味なのか。また、この“バカップル”は今後どうしたのか。
・・・・・・それは皆さんのご想像にお任せするわ。













 

私の銀さんのイメージは、“バカップル”なのです(笑)。彼女さんは少しぐらい常識があるけど、でも結局銀さんに流されてしまって、結果バカップル。
そんな話を書こうと思ったわけですが・・・いやぁ、やはり書き慣れないので難しいです(苦笑)。

そういえば。これを少しずつ書き進めているとき、ちょうどオフ友から「銀時夢が読みたい!」と言われました。私なんかの作品でいいのか?!と非常に恐縮するのですが・・・(滝汗)。
オフ友も含め、少しでも私の作品を楽しんでくださる方がいらっしゃれば、喜ばしい限りです(最敬礼)。

('10/06/08)